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テニス肘の治療についてまとめた日本語記事



※治療下記のURLからご覧になれます↓↓↓
http://landing1.gehealthcare.com/201508_voice_img_oec_01.html


タイトル
 難治性外側上顆炎(テニス肘)に対する、Cアームを用いた血管内治療(TAME)の紹介
 TAME:Transcatheter arterial micro-embolization



本文

はじめに
1992年にNirschlらは外側上顆炎の組織学的な特徴を“angiofibroblastic tendinosis that is degenerative in nature due to the lack of acute inflammatory cells”と報告し、以降の研究における組織学的な検討からも、難治性外側上顆炎では炎症性変化は乏しく、小血管の増殖と変性変化が主であると報告されています。また増殖した小血管には隣接して神経線維が増生することが報告されて以来、これらの血管と周囲神経が痛み症状の原因ではないかとする説が挙げられています。

我々は微細な増殖血管を塞栓する治療法によって慢性的な痛み症状が改善することを、腱炎付着部炎、肩関節周囲炎などで報告してきました(参考文献1、2)。

微細な血管をターゲットとする本治療法を「経動脈的微細血管塞栓療法」(Transcatheter arterial micro-embolization:TAME)と呼んでいます。

一言で「塞栓」といっても、組織の栄養血管の全てを永久的に閉塞させてしまえば、当該組織は壊死に陥ります。私たちのTAME治療では、このことを防ぐために、塞栓作用時間が極めて短い、一時的な塞栓物質を用い、かつ最低限の使用量で異常な血管だけをターゲットにした治療をしております。このため、虚血の合併症を起こさずに治療することが可能です。

当施設では難治性外側上顆炎に対して、外科用イメージ(Cアーム)を用いた外来ベースでの血管内治療を行っております。本稿では、高精細100万画素カメラによる高分解描写とリアルタイム周波数処理により透視部位毎に画像を最適化する機能(Dynamic Range Management:以降DRM)を搭載するGEヘルスケア社の外科用イメージ、OEC9900Elite(以降OEC9900)を使用し、治療した症例を振り返りながら、我々の手技手順およびこれまでの臨床結果について概説します。

術前評価として超音波診断装置のカラードップラ機能を用いて外側上顆周囲の血流評価および血管分岐パターンの把握を行なっております。ドップラシグナルはECRBの付着部の腱実質内の観察されることもありますが、それ以外にも外側上顆周囲や腕橈関節部など、他部位に認められることもあります。速度レンジを落として、低流速のシグナルも拾うように設定しています。


TAME治療の手順

1. カテーテル挿入口の作成
治療は局所麻酔下に行ないます。
橈骨動脈の拍動を確認し、同部位を消毒した後に局所麻酔を施します。サーフロー針で橈骨動脈を逆行性に(中枢に向けて)穿刺します。逆血を確認したら、ガイドワイヤーを動脈内に挿入します。逆流防止弁のついた3Frシースイントロデューサー(外径1.6mm)をワイヤー越しに挿入し、カテーテルの入り口を作ります。

2. カテーテルの挿入
シースイントロデューサーから3Fr親カテーテル(外径1.0mm)を挿入し、透視下にガイドワイヤーを先行させながら上腕動脈まで進めます。

上腕動脈まで進めた親カテーテルの先端から造影剤5mlを投与して、肘窩全体の血管撮影を施行します。OEC9900では前出の血管造影撮影用プロファイル(DRM)を有しており、血管観察のために最適化したサブトラクションモードにて、投与した造影剤のみを最適なコントラストで透視描出することができます。

3. 圧痛の確認
ここで、触診により患者の上腕骨外側上顆の圧痛を確認しておきます(塞栓後の比較のため)。

4. 異常血管の有無の確認
外側上顆炎でターゲットとなる主要な動脈は、橈側反回動脈です。この動脈は上腕動脈が橈骨動脈と尺骨動脈に分かれてすぐの橈骨動脈から外側に分岐し、前腕伸筋群の起始部、同筋群の近位筋腹、周囲の皮膚や皮下組織を栄養します。この血管の分岐部に親カテーテルの先端を近づけ、再度血管撮影を行ないます。外側上顆周囲における異常血管の有無を確認します。

異常血管が確認されたら、先端1.7Frの子カテーテル(外径0.56mm)を親カテーテル内から挿入し、橈側反回動脈内まで進め、フローが保てる範囲で可及的に病変部に近づけます。

本症例では、外側上顆に認められた異常血管は、極めて少ないものでした。このことは術前評価でのカラードップラシグナルの所見とも一貫しています。
治療時に認められる異常血管の量は症例によって異なります。ここでは、別症例の典型的な動画もお示ししておきます。

5.  塞栓物質の作成
塞栓物質の作成準備に入ります。TAMEでは、永久塞栓物質ではなく、一時的塞栓物質を用いて治療します。本来は抗生物質であるイミペネム・シラスタチン(粉末)0.5gを造影剤5mlに混和させた懸濁液を用いています。イミペネム・シラスタチンは難溶性であることから、粉末が溶解せずに、直径10-70μmの微小粒子を一時的に形成します。塞栓作用時間は数時間から12時間程度と極めて短いです。

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6.  塞栓手技
懸濁液を投与する直前に造影剤で2倍希釈して、そのうちの0.2mlを子カテーテルのハブ内に充填し、生理食塩水で後押しします。投与は透視下に行ない、動脈内の自然なフローにのせて送り出します。血流速度が遅くなるまでこれを繰り返します。血流が遅くなったら投与を止め、再度血管撮影を行います。異常血管による濃染像が消失するあるいは大幅に減少していることを確認します。適度に塞栓物質が異常血管内に分布すると、圧痛所見が消失します。このため、投与後数分してから患者の病変部を塞栓前と同様に圧迫し、圧痛が消失あるいは大幅に減少していることを確認します。

濃染像と圧痛所見の消失or大幅な減少が確認できたら、5-10分間待機します。待機後に再び血管撮影を行います。一般的に塞栓物質は時間が経過すると、動脈内の圧により深部に押し進められるために、異常血管による濃染像が再び見えてくることが多いです(初回ほどではありませんが、ある程度は残存しているのが確認できることがあります)。異常血管による濃染像の残存が確認できたら再度イミペネム・シラスタチンを投与します。

2回目の投与から再び5-10分待機して、再度血管撮影を行います。異常血管が大幅に減少していれば塞栓手技を終了します。血流が豊富で再び異常血管が明らかに認められる場合は、同じ塞栓物質を再度投与して終了するか、あるいは球状塞栓物質の投与を検討します(球状塞栓物質はアクリルポリマーなどでできた球状の粒子製剤です。体内にとどまる期間は1ヶ月以上とされます。使用に不慣れな状態では、正常組織の栄養血管を広範に塞栓する可能性があるため、注意が必要です。十分に希釈したEmbosphere100-300μmなどを用いて、あくまでも濃染像の消失をエンドポイントとし、必要最低限の量を投与します)。

塞栓手技が終了したら、親カテーテルから肘窩全体の血管撮影を再度施行します。橈側反回動脈のほかに異常血管が見られる可能性があるのは、骨間反回動脈、または上腕動脈から外側上顆に向かう橈側側副動脈です。これらの血管をチェックして異常がなければ終了とし、異常血管があれば同様に塞栓手技を施行します。

7.  カテーテル抜去
終了後はカテーテルを抜去して、橈骨動脈の穿刺部を10分間圧迫止血します。止血を確認したらガーゼを丸めたものを穿刺部に押し当ててテープで止め、1時間安静にした後に出血のないことを確認して帰宅となります。




TAME治療の臨床成績と今後の課題


当施設では2012年から同治療法を施行し始め、難治性の腱炎付着部炎の70例以上を治療しました。そのうち治療後1年以上経過を観察した外側上顆炎20例について臨床結果をまとめています(論文投稿準備中)。20例施行した中で1例を除いた19例で明らかな異常血管を認めています。異常血管を認めた19例では全例で治療後に疼痛の減少が得られています。満足のいく除痛は治療後すぐに得られるケースもありますが、ゆるやかに疼痛が減少していき治療後2,3か月経過してから満足が得られる方が多いです。

また19例のうち3例は除痛が得られてから4か月以内に症状の再発があり、再治療をしています。安全性については、全例で経過中に皮膚変化、筋萎縮などの変化、塞栓領域の知覚異常、エコーにて腱実質内の変化を観察していますが異常は認めていません。また一部の症例では治療後のMRIも撮影し、骨壊死や筋委縮、腱内断裂、軟骨の変化など観察していますが異常は認められません。

他治療との比較試験を行なっていないことから、本治療法の優位性を示すデータはありません。今後、臨床試験をかさねることで検討すべき課題であると言えます。

   【参考文献】

Okuno Y, Matsumura N, Oguro S. Transcatheter arterial embolization using imipenem/cilastatin sodium for tendinopathy and enthesopathy refractory to non-surgical management. JVIR 24 (2013) pp. 787-792
Okuno Y, Oguro S, Iwamoto W, Miyamoto T, Ikegami H, Matsumura N. Short-term results of transcatheter arterial embolization for abnormal neovessels in patients with adhesive capsulitis: a pilot study. J Shoulder Elbow Surg. 2014 Sep;23(9):e199-206.


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