痛みなどの感覚は、普通「神経」によって伝わります。
それなのに、なぜ痛みは「血管」と関係あるのでしょうか?
実は血管と神経は「対になって伴走している」ことが知られています。つまり、常に一緒に存在しているのです。
右の写真は、顕微鏡で血管と神経を観察しています。太めの血管の周りに、矢印で示された細い線維(神経線維)が存在しているのがわかると思います。
このように、血管と神経は一緒に存在しており、痛みのある場所に血管がたくさんできることが知られています。アキレス腱炎やテニス肘といったスポーツの痛みでも、血管が「異常に増えてしまう」のです。
下の写真は、炎症の起きたアキレス腱を超音波で観察したものです(赤や青に色づけられた箇所は血管)。
正常なら、アキレス腱の中にこのような血管は一切見られないのですが、炎症が起きている状態では、血管が存在していることがわかると思います。
これは、異常な血管が「生えてしまっている」状態で、この新しい血管の発生に伴い神経も増えてしまうことが知られています。
痛む箇所では血管が増殖しており、そのすぐ近くに神経も増えてしまっている。この「異常な血管」の増殖と、それに伴う「神経」の発生が痛みの原因になっていることが多々あるのです。
運動器カテーテル治療では、この「異常に増えた血管」にアプローチします。余計な血管を減らすことで痛みを取り除き、正常な状態に戻す治療方法です。
では、実際に血管へアプローチしているところを見てみましょう。
下の写真をご覧ください。
踵(かかと)に痛みを感じている患者さんへの治療です。
左がレントゲン写真
真ん中と右は同じ場所の血管だけ見えるようにした「血管撮影写真」。黒い線が血管です。
真ん中の「治療前」の写真では、矢印のところに異常な血管が増えているのが分かると思います。患者さんの痛みもここにあります。そこに運動器カテーテル治療を施すことで、右の「治療後」の写真のように異常な血管を減らすことができます。
そして驚くべきことに、異常な血管の流れを止めることで、すぐに痛みが改善するのです(薬を流してから数分後)。
これは、痛みと「血管」の関係を如実に現わしています。
このように、異常な血管を減らすことで痛みを改善させるのが、運動器カテーテル治療のメカニズムです。