奥野先生のコラム

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アメリカのジョージア州アトランタで開催されたSIR(Society of Interventional Radiology)に参加してきた。 米国のカテーテル学会という位置づけでいいと思う。

アメリカの地理に詳しくない私は、ジョージア州がどこに位置しているかをGoogle先生に聞かなければならなかった。

ジョージア州はアメリカの南部にある。

アトランタの地下鉄に乗ると、乗客はほとんど黒人で、しかもかなり危険な臭いがプンプンさせていた。日本の電車でも車両一両まるごと包んでしまうような悪臭を身にまとい、雄たけびを上げるようなひとを見かけることがあるが、アトランタの地下鉄ではそういう雰囲気のひとがたくさん乗っていた。夜は出歩くのに少し勇気のいる街で、「南部」という言葉で表現される世界を肌で感じることができた。



米国カテーテル学会に参加して



今回の学会は、今までと大きく違った。
何が違うかというと、私は「招待された」のだ。

今までは「abstract submission」と言って、自分が発表したい内容を簡単にまとめた要旨をオンライン上のシステムから「出願」して、それが受理されれば発表の場を与えてもらえる、という流れであった。
今回は学会側から「こういうテーマで話してほしい」という依頼にこたえる形で参加させていただいた。

これはとても大きな差であった。つい昨年までの「出願」の体験があるだけに、その差が明らかな形となって感じ取ることができた。


もちろん旅費がかからないということが切実な点だ。
航空券は十数万するし、宿代も安くない。参加費は6-7万円。さらに食費など考えると1度の海外学会参加で30万以上は必ず飛ぶことになる。

今回はこれらすべてが学会から支給されることになる。正確に言うと参加費やホテル代はすでにタダで、航空券や食費は後日領収書を送ることで金が返ってくる(ちゃんと帰ってくることを切に願っている)。reimbursementというらしい。



米国カテーテル学会に参加して



しかしもっとも大きな違いは、「聴衆の聞いてくれる度合い」といってもいいかもしれない。

以前は自分の発表内容が与えるであろうインパクトに相応のリアクションを聴衆からいただくことはほとんどなかった。
ポスターで発表しても、別に見向きもされないことが多々あり、また口頭発表でも、一人5分ほどしか与えられない中で、しかもさまざまな研究のなかに交じって話すとなると自分の内容を目当てで来る人も少ない。

自分が発表で与えたインパクトは、発表後の質問の数や名刺交換、その後のe-mailのやり取りなどに現れてくると言える。

今回は違った。

まず「カテーテルによる塞栓術の新しい領域」と題されたようなセッションで私のほかに3人の新しい分野に挑戦している人と一緒に話すことができた。この時点で聴衆は「カテーテルによる塞栓術の新しいチャレンジに興味のある人」が集まってくる。

さらに発表後にもいくつも質問を受け、名刺交換をし、そして次回の「塞栓術学会」のような者にもご招待されることがその場で決まった。

次の機会を与えられた、というのは発表の反響が予想以上であったと私も感じることができた。

日本に帰ってからも、あの人たちが今後の自分の仕事の発展を見守ってくれている、期待してくれていると思うと頑張らなければ、という思いがしくしくと湧き起ってくる。

今回はホテルに2泊、機内で1泊のスケジュール。
月曜の夕方に日本を出て、木曜日の夕方に帰国した。

新たなチャレンジをすることにエネルギーとすると誓った2日間であった。

米国カテーテル学会に参加して