奥野先生のコラム
奥野ブログ
STAP論文について
STAP細胞の一連のニュースが気になって、ついiPhoneで毎日チェックしてしまう。
とてもインパクトのある事件だからだと思う。
あまりに気になって手がつかないのが嫌なので、ここに書いて自分の中で整理しておきたい。
小さい視点から始めると、「STAP」というアイデアが半減期を迎えて終息するのか、あるいは何かで息を吹き返すのかがとても気になる。
どちらにしても最低でも1、2年はかかること。
今回のNature論文は撤回の方向で間違いないと思う。それ以外の道はないと思う。
そのあとは、いくつか可能性があると思う。
世の中的には全否定ムードだが、(もちろんそう言われても仕方がない)
冷静にリプログラミング研究をしている人の中には
再現実験を進めている人もいると思う。
第3者からの再現が出れば、状況はまた変わることもありうる。
(もちろん小保方さんの信用回復は到底簡単ではないが、「STAP」というアイデアは生き残る可能性はある)
T細胞のようなすごく分化した細胞からSTAPになったという当初の発見は、今のところ再現される可能性は低そうだけど
それでも仮に、組織中のわりとありふれた幹細胞を酸に浸したら万能細胞ができた。みたいなことが追試で確認が出来たら、これはそれなりに業界にはインパクトがあると思う(専門外なのでわかりませんが)
ES細胞を酸に浸して胎盤までなるなら、それも新しいのでは?
そうすると「STAP」というアイデア自体は生き残ることになる。
がん幹細胞みたいなこともSTAPという現象が確認されると発展していきそうだし。
大絶賛か全否定かという風潮はさておき、
研究は探検みたいなもので、すごいをお金かけて今まで検証したことがない実験をやったわけだから(だれも踏み込んでない土地に分け入っていった)その人たちが持ち帰ったものの中には、役に立つようなものもあるかもしれない。
論文に嘘が含まれていることはわかったけど
何かしらの有力な発見もあったのではないかと思う。
せっかくやった実験だから、そういう最善のことをするのがいいなと思う。
※ちなみに実験の再現というのは簡単ではないことがほとんど。実験は手術と似ています。術式の教科書を読んでもすぐに手術が成功するわけではありません。難しい手術ならなおさらです。手を動かす中でコツを掴んでいって、そういうのの積み重ねで難しい実験が成功することは多々あります。なので他で再現できない=嘘が確定ではないです。
次に大きな視点として
科学業界の価値観や評価基準を見直してもいいように思う。
今に始まったことではないけど
インパクトファクターの高い論文に出したら即偉いみたいな風潮がどんどんエスカレートしていたと思う。
このあたりで、これを見直してもいいのでは?
これは今の教授クラスの年代が原因だと個人的には思う。
即結果を求めて、結果が出たら即評価して、すぐに結果のでない研究者は評価されない。
そんな行き過ぎた成果主義の中でしか、小保方さんが理研のユニットリーダーになることはなかったし、今回のような論文がでることもなかったと思う。
ちょっと有名な雑誌に載せたらとてつもなく評価する、みたいなふうになりすぎだろ、と前からすごく思う。
だいたい、よく考えたら、インパクトファクターってなんだよ!って話なんだけど。
偏差値と同じで、あたかも真実そういうものがあるようにしているだけで、単なる虚構なのは普通に考えればわかる。
研究やったことがあればなおさらよくわかる。
インパクトファクター高くてもインチキな論文は山ほどあるし
インパクトファクター低くても、後世にわたって引用されて多くの研究者の役に立つ論文もたくさんある。
インパクトファクターのような、即時性の評価基準ではなく(もちろんひとつの論文出すのは時間がかかるけど)
もっとほかの判断基準で評価して、お金をかけて行ったほうがいいのでは?
理研は1年ごとの契約とかいう噂。
NIHみたいにもう少し長い目でお金かけたほうがいいだろ。
高い研究費でできた論文が成果を焦るあまり半分くらい嘘でできていて、それでもいい雑誌に載っていて
研究者は食いつないでいて
そんなことがざらにある世界ってどうなんだ?という
そろそろそういう話になってもいいと思う。
評価基準変えよう!